お客様の想いと商品を理解し、誰もが魅力的と思えるデザインに。
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デザイン本部 デザインスタジオ チーフ デザイナー辻隆史
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デザイン本部 デザインスタジオ チーフ デザイナー横井宣和
local_offer開発課題
企画提案から並走できる風土
横井弊社は自動車から家電・電気、事務機器など幅広い分野の開発支援をおこなっています。ロボティクスも作業補助やパーソナルモビリティにおいて技術的な強みを発揮していますが、運搬サポートという、いわゆる物流ロボットソリューションは初めての経験。知見がまったくないので、まずはTGグローバルテクノロジーズ(以下、TBG)さんから企画書を見せてもらい、商品に対する想いや使い勝手を聞いてイメージを膨らませるところからスタートしました。
辻今回のデザイン開発は4~5名でチームを構成。主に工場内で使う運搬ロボットで、重量100kgにも耐えられるものとお聞きしていました。ですが、CoRoCo開発のきっかけとなったロボットの実機をお借りして見ると、コンシューマー市場向けも想像できるほどかわいらしい形。チームでブレインストーミングした結果、物流の作業支援以外に日常の買い物サポートや、アウトドアで荷物を載せるなどといったところまでアイデアを広げ、それでもかっこいい形状はどのようなものだろうと考えたのです。
横井プロダクトデザインに強みを持つ弊社に依頼されるのであれば、まずはデザインを一から開発していきたい。魅力ある商品を作るためにもデザインの重要性をTBGさんにご説明し、スタイリングへと移行していった感じです。
local_offer開発工程
チームでディスカッションしながら想いを形に
横井用途は広げてアイデアを出す方向になりましたが、基本は工場など物流現場で使うものになるわけですから、留意しなければいけないのは安全性です。台車が角々しいのは人が接触するときに危険なので、丸みを帯びた形や、車体の角に装着するカバーなどは検討材料になりましたね。
辻使う作業員の使い心地も大切です。たとえば、台車部分に物の転落防止は必要ですが、制限を設け過ぎると積める物が限られてしまうから専用ボックスを置くのはどうかとか。物流現場では、フォークリフトなどでパレットに積んだ荷物を運んでいますが、きっとCoRoCoはその前段階の作業で使われるのだろうと、作業員のオペレーションを思い浮かべながらラフスケッチに着手していきました。
横井まず、できるだけ多く手描きでアイデアを描き出し、チームでディスカッションしました。採用された案は、手描きラフを元にCGで2Dスケッチを作成。この時点では、モーターやタイヤのサイズ感程度は考慮し、ひとまずコンセプトに沿った商品の全体像を仕上げてTBGさんにご提案しました。
辻そこで2~3案に絞っていただき、次のステップへ。このときは商品の造形だけでなく内蔵物や素材はもちろん、緊急停止ボタンや車両可動ランプの位置といった細かなディテール等を一層リアルに3Dデータ化し、これで2回目のご提案です。
横井はじめて物流ロボットをデザインすることになり、文字通りゼロベースからのチャレンジ。プレッシャーも感じつつ、今の物流現場の様子も自分たちなりに調べながら創意工夫を重ねました。
「自分も使ってみたい」そう思うデザインが目的地
横井デザインでこだわったポイントはいろいろあり、ひとつは台車に取り付けたバーの形状です。カーブをつけてかわいらしさを表現しましたが、意外とこうしたカーブのバーを作成できるメーカーが少ないのを後から知りまして(笑)。ただモックアップ製作まではデザインにこだわりたかったので、弊社の開発本部と相談して特注にしてもらったんです。
また、リモコンやハンドルも相当数のモックアップを作りました。CoRoCoは積み荷して人が引っ張る仕様なので、特にハンドルは握り心地が重要です。モックアップを作っては手の大きさが違う人たちに握ってもらい、ミリ単位で調整しながら改善を図りました。
こんなふうに、最初のアイデア出しからだいたい2ヵ月弱でプロダクトデザインを進行していきましたが、最終的には“作業支援だからこう!”といったことは意識せず、子どもや女性がこの商品を見てもステキだと思ってくれるか、あるいは使う人が最先端のロボティクスを使っていると満足できるか、という形状のかっこ良さを優先したと思います。結局、いい商品だと思われなければ購入してくれませんから。
辻もっとオートメーションの一部のようなロボティクスであれば周囲に溶け込んだような形状でいいと思うし、あるいはアマゾンジャパンの物流倉庫のロボットのように自走式ならクールな形状もアリです。ですがCoRoCoは人とセットのような扱いなので、横井が言うように「自分も使ってみたい」と思っていただけることが大事なのでは。人との相性、愛らしさをいかにバランス良く取り入れて仕上げるか、この部分はまさに私たちデザインチームのノウハウの結晶と言えるかもしれません。
local_offer完成・未来に向けて
自由な発想を盛り込み、さらなる高みへ
横井デザインを3Dデータ化したあとは、開発本部にパスして内部の部品や表面素材の開発に移行していきますが、同時に量産化に向けたデザイン調整も外部メーカーさんとやり取りしました。当然、コスト面を配慮しなければなりませんし、生産性向上を実現するために主要な形状の改善など、検討項目は多岐に渡ります。規定を守りつつ、私たちがこだわったデザインもなるべく残せるよう何度も話し合い、こうしたやり取りは本当に勉強になりました。
辻日頃、量産工程までサポートさせていただくことはあまりなく、基本的に3Dデータを作成後は、データをお客様にお渡しして終わり。お客様が弊社の開発支援にご満足いただくことが一番の喜びではありますが、ここまで全工程に関わり、かつオリジナリティも活かされたということは、シンプルにうれしかったです。
今後、CoRoCoのデザインでやってみたいことですか?思い切ってコンシューマー向けのデザイン要素を強めてみたいですね。ブリキを使って台車をクラシカルに仕上げたり。
横井今回手掛けた「CoRoCo-S100」が実際に販売され、お客様のフィードバックを検討してまたアイデアを考えたいですね。デザインから仕上げまでトータルに開発支援できる弊社だからこそ、こうした次世代ロボティスクにもどんどん自由な発想を盛り込み、使う人が快適で楽しいものに仕上げていく。それが私たちの役割だと考えています。
提供技術
- 開発支援(デザイン / CG制作 / 設計 / 部品製作 / 表面処理 / 車両製作 / プロトタイプ製作 / ロボティクス)